最近、免疫細胞を用いたがんならびに難治性感染症に対する養子免疫療法が注目されている。抗原特異的養子免疫療法における最大の課題は、high affinityのT細胞レセプター(TCR)を発現しているCTLを大量に誘導することである。我々は、すでに樹立したがん関連抗原由来ベプチド特異的CTLクローンからTCR遺云子を単離し、その発現レンチウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターを構築した。さらに、末梢血リンパ球ならびに造血幹細胞に遺伝子導入し、TCR発現細胞機能を解析した。健常人末梢血CD4およびCD8陽性T細胞にTCR遺伝子導入したところ、効率よく遺伝子導入したTCRの発現が確認された。TCR遺伝子導入CD8陽性T細胞はもとのCTLクローン同様に、HLA拘束性に腫瘍細胞に対して細胞傷害性を示したが、正常細胞には全く影響を与えなかった。他方、このTCR遺伝子を臍帯血CD34陽性造血幹細胞に遺伝子導入した後、新たな免疫不全マウスであるNOD/SCID/commonγ^<rull>マウスに移植した。約3ヶ月後に遺伝子導入したTCRを発現するヒトT細胞が分化、増殖することが確認された。これらのT細胞は、ペプチド刺激時異的にIFN-γを産生したことから、機能的にもペプチド特異牲を有していることが確認された。これらの結果は、がんならびにウイルス特異的CTL由来TCR遺伝子導入による新たな治療法開発が可能であることを示すものである。現在さらに、ヒトサイトメガロウイルスならびにEBウイルス特異的CTLクローンを樹立し、それらからTCR遺伝子をクローニングし、そのベクターの構築を行っている。
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