全身性ループスエリテマトーデス(SLE)は、自己免疫病の一つで特に自己免疫性糸球体腎炎は、患者のQOLを下げる合併症の一つである。SLEは通常Th1型の免疫反応を伴うことが多いが、一部の患者では、Th2型の免疫反応を伴い異なる糸球体腎炎の組織像を示すこともある。近年、Th17と呼ばれ、主としてIL-17を産生する新しいヘルパー細胞集団が同定され、炎症性疾患に深く関わることが明らかにされた。SLEやSLEに伴う糸球体腎炎発症におけるTh17やIL-17の役割は明らかになっていない。このため、SLEに類似した自己免疫病態を呈するMRL/lprマウスにおいてIL-17を欠損させ、その病態の解析を行った。現在、MRL/lpr系統への戻し交配が進行中であり、まだ腎組織像や生存率の解析には至っていない。また、IL-17のみならずTh17の関与を検討するため、Th17の分化に障害を持つIL-23欠損マウスとの交配も進行中である。一方、MRL/lprの遺伝的背景を持ちIL-27受容体を強く発現するトランスジェニックマウスにおいては、野生型マウスにおいて認められる糸球体腎炎の発症もほとんど認められず、生存率の著しい改善を認めた。さらに、その他の自己免疫病態も改善、および生体中の様々な免疫学的パラメーターの低下が認められた。このことは、IL-27の持つ免疫抑制作用が、自己免疫疾患などの治療に応用可能であることを示している。IL-27には、Th17の分化を抑制する作用が知られていることから、この受容体を発現するMRL/lprマウスにおける自己免疫病態の軽減が、Th17やIL-17の低減によるものかどうかを検討している。
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