各種膠原病患者(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性筋炎・皮膚筋炎、混合性結合組織病、シェーグレン症候群、アレルギー性肉芽腫性血管炎、サルコイドーシス、ベーチェット病)および健常人の血清をCIPHERGEN社のプロテインチップシステムを用いた解析を行った。 健常者と各種膠原病患者の血清スペクトルを比較したところ、SLE発症時の治療前症例15例中8例(53.3%)において、プロトン付加体イオンの質量電荷比(m/z)が特異的であるピークが見られた。SLEの発症時と安定期とで比較したところ、安定期では特異的なピークは検出されず、消失していた。 このピークはクリンプロットシステム(Autoflex TOF/TOFのリフレクターモード)でも検出され、MASCOTによるMS/MSイオンサーチにてピークに該当するペプチドの検索を行なったところ、免疫グロブリンの一部と同定された。更に検討したところ、そのペプチドのアミノ酸配列はある特異抗体の一部の領域と同一であることが明らかになった。 次に、このペプチドのSLE患者における臨床的意義について検討するため、そのアミノ酸配列情報に基づいて合成されたペプチドをウサギに免疫感作し、得られたウサギ血清中から抗ペプチドポリクローナル抗体を精製した。この精製抗ペプチド抗体を用いたウエスタンブロット法によりSLE患者および健常人血清を解析したところ、2790m/zのピークが見られたSLE患者検体において抗体に反応するタンパクバンドが特異的に検出された。その検出されたタンパク質が患者血清中の自己抗体に相当するのか、現在検討中である。 本研究により、プロテオミクスの新しい技術を用いて得られる特異的なピーク(ペプチド)が、SLEの新規診断マーカー候補となる可能性があると考えられた。
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