ペルオキシソーム脂肪酸代謝系に異常を来す副腎白質ジストロフィーはその病因であるABCD1遺伝子は解明されたものの病態は未だ不明で、同一家系内の同一遺伝子変異でも全く異なる臨床型を呈する。本症はX連鎖劣性遺伝の難治性神経疾患で、唯一の治療法は発症早期の造血幹細胞移植であり、発症前を含めた早期診断とともに、発症規定因子の探索は不可欠である。 今年度は副腎白質ジストロフィーの患者のうち同一家系、同一遺伝子変異で臨床型の異なる複数のペア細胞よりRNAを抽出して、発現量の異なる遺伝子群を以下の方法で探索したので報告する。 1)ABCD1およびペルオキシソーム代謝系に関わる特定の代謝系の遺伝子発現の差異を探索する:ペルオキシソームABCタンパクに属するABCD1〜4、これらペルオキシソーム膜タンパクの輸送に関わる一連のPEX遺伝子、および脂肪酸β酸化系代謝に関わる遺伝子群の発現を定量PCRにて比較検討した。 2)マイクロアレイ解析を用いて網羅的に遺伝子発現の差異を探索する:DNAチップを用いて両者間の発現量に有意差のある遺伝子群を網羅的に解析する。 以上の結果についてはデータマイニングを含めて現在、その解釈を検討中である。 さらに、今回のマイクロアレイ解析を応用して、遺伝子のコピー数の解析に有用なCGHアレイを行うことにより、本症におけるABCD1遺伝子の欠失例において、その欠失範囲の探索と家系内における女性例の欠失部位のコピー数を解析することにより、従来の遺伝子解析では診断未確定の症例に対して、保因者診断を実施している。
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