研究概要 |
われわれの体の中には臓器、組織特異的な幹細胞が存在し、それぞれの組織の再生・維持を担っていると考えられている。しかし、組織幹細胞の体外・体内における人為的制御に関する知見は不足しており、多くの臨床的実績を積み上げてきた造血幹細胞においてさえも、それらの知見を駆使した安定した造血幹細胞の供給・造血幹細胞に由来する安全な赤血球、血小板等の作成基盤技術開発には至っていない。さらに、ヒトにおいては、神経幹細胞のように、入手が困難な組織幹細胞が多く存在するため、十分な検討が行えず、有効性、安全性の担保を必要とする再生医療の構築には困難を伴なっている。胚性幹細胞(embryonic stem cell: ES細胞)は一定の培養条件下で未分化な状態を保持し,ほぼ無限の自己複製能を持ちながらあらゆる種類の細胞に分化できる全能性を有する細胞として知られており、様々な組織幹細胞が作成できるソースとして大きな期待が寄せられている。しかし、ヒトにおけるES細胞の樹立・研究は社会的、倫理的な問題を抱えている。また、ヒトES細胞は、その出自に特化した組織適合性抗原を有するため、移植医療に用いる場合、拒絶・GVHDなどの有害免疫反応が予期され、再生医療への展開には大きな障壁となっている。この様な問題を解決できる人工多能性幹細胞(iPS細胞)が作成されるようになった。今回、マウスiPS細胞を用い、我々がマウス、サルES細胞において確立してきた造血(幹)細胞作成に関する基盤技術について再評価を行うとともに、より効率的な基盤技術の開発を行なった。
|