研究課題
血管肉腫あるいは悪性血管内皮細胞腫は、極めて予後の悪い疾患である。悪性黒色腫が一定の治療成績を挙げているのに対して、予後改善に有効であった治療方法もない。IL-2は整容的にまた一時的に患者の状態を改善するが結局は肺などへの転移で死亡するのが大半である。また、極めて高価である。対照的に、従来から我々が研究してきた極めて安価なフェノールによってIL-2の局注程度あるいはそれ以上の有効性が血管肉腫あるいは悪性血管内皮細胞腫で認められれば、極めて有望な治療となり得る。三年間の成果を簡潔にまとめると下記のごとくである。1) 臨床面:3年間において、臨床的な結果は欧米の皮膚雑誌(IJD)に発表した。さらに安全性と有用性についてさらに精度が上がった。日光角化症とボーエン病では、本治療の奏効度について、病理組織・免疫組織化学的に検討した結果、腫瘍の厚さと腫瘍増殖性のマーカーのひとつであるcyclin A値に関連があることを見出した。2) 基礎面:マウス皮膚由来血管内皮細胞株F-2を用いて、in vitroでフェノールの細胞毒性やアポトーシスの誘導能を検討した。細胞毒性については、96穴プレートを用いたMTT方法で、CellQuanti-MTT^<TM>Cell Viability Assay Kitsによる。マウス由来の表皮細胞株Pam 212と線維芽細胞株NIH-3T3においても同様な検討を行った。しかし、細胞毒性が強く至適な条件を見つける事は出来なかった。従って、処理された培養細胞ライセートのDNA断片化やPI法等で調べ、カスパーゼ3の活性やアポトーシス誘導蛋白であるBax等についても検討も出来なかった。我々のデータから、この疾患に対してフェノールを用いた臨床報告がいくつかの他施設からなされた、一定の成果を上げつつある。
すべて 2009
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日本美容皮膚科学会雑誌 19
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Int J Dermatol 48
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