抗体産生細胞である形質細胞には長期寿命型と短期寿命型の2種類存在する。ところがこれらの役割の違いや局在、表面マーカーの違いなどにおいて、多くのことが不明のままである。そこで、これら2つのサブセットの違いを明確にし、さらに2次リンパ器官から骨髄へのホーミングメカニズムの制御機構の解明を目指すことを本研究の目的とする。 申請者らは、短期寿命型形質細胞が、CXCR4hi+S1P1lo+であり、長期寿命型形質細胞がCXCR41o+S1P1hi+であること、さらに形質細胞が2次リンパ器官から血中にegressする際に、sphingosine-1-phosphateとその受容体の一つであるS1P1が関与していることを明らかにした。 B細胞の後期分化を調節する転写因子の一つであるBlimp-1は抗体産生細胞に特異的に発現することが知られている。Blimp-1 GFP knockinマウスに免疫を行い免疫後の脾臓、血液、骨髄中のGFP陽性サブセットを調べると、脾臓にGFPint+とhigh+の2サブセットあるが、血中にはGFPint+のみ存在し、骨髄中では、GFPhigh+のみ存在していた。この所見に一致し、脾臓中の形質細胞はS1Pに対してGFPint+の形質細胞のみがS1Pへの化学遊走能を有しており、S1P1mRNAの発現もBlimplGFPint+に強く発現していた。 また、ハプテン反復塗布により誘導するアトピー性皮膚炎モデルを行うと、皮膚や所属リンパ節にIgE産生形質細胞が認められた。 以上より、形質細胞のホーミングや寿命の決定においてS1P-S1P1シグナルが重要であり、このシグナルを調節することが、今後アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患や自己免疫疾患における治療へ発展する可能性を呈した。
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