研究課題
神経性無食欲症(AN)では極度の低栄養状態、食行動異常(不食、偏食など)、肥満恐怖、身体感覚の異常、抑うつ、強迫症状などが臨床上認められる。最近、AN患者での炎症性サイトカインの分泌亢進が示され、食欲抑制との関連が注目されていることから、炎症性サイトカインの抑制作用を持つエイコサペンタエン酸(EPA)のこれらの症状への効果を検証する。本研究では、EPAまたはプラセボを8名の患者に任意に振り分けて12週間継続投与し、臨床症状評価(体重、Ham-D)、末梢血中のサイトカイン(IL-1β、IL-6、TNFα)の濃度を開始時と終了時に実施した。得られた結果から、EPAの臨床効果を判定し、さらに臨床効果とサイトカイン濃度の変化との関連をみた。結果では、EPAの脂肪酸重量%は、EPA投与群における開始時の平均0.64%であり、終了時には1.54%に増加した。これに対して、EPA非投与群では投与前後EPAの脂肪酸重量(開始時0.47%、終了時0.45%)には変化がなかった。平均体重の変化は、EPA投与群(開始時30.0kg、終了時32.5kg)とEPA非投与群(開始時30.2kg、終了時32.7kg)との間に差はなかった。抑うつ評価尺度(Ham-D)の平均得点についてもEPA投与群(開始時25/52、終了時22/52)とEPA非投与群(開始時27/52、終了時24/52)との間に差はなかった。また、臨床症状とEPAの脂肪酸重量の変化、サイトカイン濃度の変化には相関が見られなかった。
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浜松大学保健医療学部紀要 1
ページ: 1-8
Journal of Clinical Psychiatry (印刷中)
浜松大学臨床心理事例研究 1
ページ: 29-31