はじめに、研究計画の変更(改善)について報告する。まず、当初の計画では、レポーター遺伝子の上流に組み込む低酸素反応性転写因子HREについて、実験経過が思わしくなければ複数コピーのHREを組み込む等の工夫をする、としていたが、新たに得られた知見をもとに最初からなるべく多くのコピーのHREを組み込むことを目指した。また、作製した遺伝子コンストラクトは、レンチウイルスベクターを用いて培養細胞に導入した上で細胞自動解析分離装置(FACS)を用いて導入細胞を選択的に集めることを検討していたが、予備実験の結果、より安全性と確実性が高い、リン酸カルシウム法によって培養細胞に導入した上で安定発現株を樹立する方法を採用することとした。 今年度は、研究実施計画に基づき、低酸素レポーター移植担癌マウスの作成を目指して実験を行った。HREは血管内皮増殖因子(VEGF)遺伝子のプロモータ領域からサブクローニングした。pGL4.26ベクターにHREを複数個連結して挿入したレポーターベクターを作成した。これをリン酸カルシウム法によってヒト由来大腸癌細胞株に導入して様々な低酸素状態で培養し、低酸素によって誘導されるルシフェラーゼの活性を比較した。その結果、我々が作製したHREは、低酸素状態に良好に反応し、異なる2個の遺伝子を同時に発現させることができることが確認できた。 来年度は、ルシフェラーゼ遺伝子をhNISレポーター遺伝子に置き換えて安定導入した培養癌細胞株を樹立し、ヌードマウスに移植して増殖させることにより、低酸素レポーター移植担癌マウスを作成し評価する。これによって、低酸素状態をインビボで経時的に観察できるようになり、低酸素研究に有用な動物実験モデルが出来上がる。なお、今年度の研究成果については、平成20年5月に開催される日本分子イメージング学会にて発表する予定である。
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