本研究では、トリカブトアルカロイドより合成した新規誘導体の放射線によるガン治療への応用を目指している。そのために、数種類の腫瘍細胞とヒト造血幹・前駆細胞を用いて、抗腫瘍/放射線増感作用と副作用の最適化を目指した評価システムを駆使し、高い抗腫瘍/放射線増感作用を示す一方で、副作用の少ない新たな抗腫瘍/放射線増感剤への応用開発を目的とした。平成19年度の神経膠腫細胞A172及び肺癌細胞A549の増殖に対する検討から、評価した40種類の化合物のうちC_<20>-diterpenoid alkaloid誘導体にのみ活性が認められ、そこに強い構造活性相関が示された。得られた成果は専門学会及び論文として発表すると共に、特許出願を行った(特願2007-238584)。平成19年度末に、一連の誘導体化合物の副作用の評価を目的としたヒト造血幹細胞への評価検討過程で、それまで全く腫瘍細胞増殖抑制効果並びに放射線増感作用を示さなかった一部の化合物に、ヒト造血幹・前駆細胞に対する増殖促進作用を示す化合物が見出された。この発見は、計画当初では全く予想出来ない作用であり、従来の抗がん剤や放射線増感剤に新概念をもたらし、本研究の飛躍的発展につながる当研究の成果に重大な影響を与えるものであるため、知的財産の取り扱いを含め、初期計画の大幅な見直しに迫られ、当該年度補助金の一部を繰り越し、これら課題の検討も併せて進めた。その結果、検討した40種類の化合物から最も強い増殖促進作用を示す化合物を見出し、さらにこの作用発現において標的細胞である造血幹細胞に大きな個体差が存在する事を明らかにした。
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