研究概要 |
本研究では、トリカブトアルカロイドより合成した新規誘導体の放射線によるガン治療への応用を図る。そのために、数種類み腫瘍細胞とヒト造血幹・前駆細胞を用いて、抗腫瘍/放射線増感作用と副作用の最適化を目指した評価システムを駆使し、高い抗腫瘍/放射線増感作用を示す一方で、副作用の少ない新たな抗腫瘍・放射線増感剤への応用開発を目的とした。平成20年度の研究から、ヒト神経膠腫細胞A172及び肺癌細胞A549の増殖抑制作用を示したトリカブトアルカロイドの中でも低毒性成分であるC_<20>-ジテルペノイドアルカロイド由来pseudokobusine新規誘導体に、ヒトリンパ腫Raji細胞に対する増殖抑制作用を見出した。その後の一連の誘導体化合物の副作用の評価を目的としたヒト造血幹・前駆細胞への評価検討過程で、ヒト造血幹細胞の増殖にほとんど抑制作用を示さない化合物が見出された。さらにそれまで全く腫瘍細胞増殖抑制効果並びに放射線増感作用を示さなかった一部の化合物に、ヒト造血幹・前駆細胞に対する増殖促進作用を見出した。これら作用は全てpseudokobusineの11位の置換基に依存しており、抗腫瘍効果と造血抑制を考える上で重要である事が示唆された。これらの成果の一部はがん研究の国際誌であるInvestigational New Drugsに掲載された。また、pseudokobusine新規誘導体のヒト造血幹・前駆細胞に対する増殖促進作用について、「トリカブト含有アルカロイド誘導体の幹細胞増殖促進作用」として弘前大学知的財産創出本部に発明等開示届出を行い、大学の帰属が決定し追って特許出願を行う予定である(発開示08-20, PA08-28)。
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