現在の分子イメージングは主にPETなどを使った核医学的手法が用いられている。しかし、サイクロトロンが必要でさまざまな核種の使用には施設が限られている。一方、MRIでは最近3Tや7Tなどの超高磁場装置が臨床に応用され、S/Nの向上やケミカルシフトの増加によリプロトン以外の核種におけるMR spectroscopy(MRS)の測定が容易になってきている。その核種としては炭素13(13C)、リン31(31P)などが知られており、13Cに関しては天然存在比が1%以下であり、13C置換化合物の投与により周囲との高いコントラストで標的構造の描出が可能と予想される。また13Cなどの安定岡位体は、核医学検査で使用される放射性同位体と異なり特殊な装置や機器がなくても比較的長期の保存が可能であること、放射性物質ではないため被曝がないこと、臨床用MRI装置でも画像化が期待できることが長所と思われる。 本研究の目的は、我々は13C標識メチオニンをグリオーマ移植マウスに投与し、超高磁場MRI装置にてグリオーマに集積した13Cを画像化できるかどうかを検討した。方法は、ヒトグリオーマ細胞をSCIDマウスの背部皮下2ヶ所に移植し、13C標識メチオニンを腹腔内投与した。コントロール群としてグジオーマ移植マウスの腹腔内に生理的食塩水を投与した。動物実験用4.7TMRI装置にて直径1インチ3回巻きの13Cコイルおよび1H体幹部コイルを用いて1Hおよび13Cの画像を撮像した。結果は、コントロールのマウスにおける13C-MR画像では、皮下脂肪織に含まれる天然存在13Cによるものと思われる淡い信号が描出された.一方、13C標識メチオニンを投与したマウスでは腫瘍部位に一致して13C-MR画像で2箇所に高信号域が描出された。以上より、グリオーマに対して13C標識メチオニンの取り込みを13CMR画像にて観察できたものと考えられた。腫瘍の代謝動態を13CMR画像を用い非侵襲的に観察することができる可能性が示唆された。
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