『目的』ESR法を用いた酸素濃度測定は、ESRスペクトルの線形が酸素濃度に依存して変化するという原理に基づいた方法である。これを臨床応用し、ESR法による腫瘍内酸素濃度のmappingを実現する。 『方法』(1)システムの設計:サーフェスコイルを利用したin vivo ESRシステムを整備する。基本的なコンポーネントは稼働しており、装置のラジオ波回路および回路定数を実験で決定していく。(2)酸素濃度感受性プローベの合成:腫瘍内の低酸素細胞の検出用に、10〜30mmHgの酸素分圧でESRスペクトル線形の変化が見られる化合物を検索する。(3)実験動物を用いた酸素濃度測定:上記のサーフェスコイル型のESR装置と酸素濃度測定プローベを用いて、動物実験を開始する。マウスにSCC VII腫瘍を作成し、腫瘍内に酸素濃度測定プローベを注入し、プローベのESRスペクトルの測定から、腫瘍内酸素濃度を測定する。この数値とポーラログラフィック酸素センサーの電極刺入で得られた酸素濃度の数値を比較する。 『結果』上記の(1)(2)の過程はほぼ完成した。ESR法で測定した酸素濃度は、ほぼポーラログラフィック酸素センサーで得られた数値と一致した。 『考察』ESR装置とMRI装置を一体化させることも可能であり、腫瘍の酸素濃度分布に適合した放射線治療が可能になることが期待できる。来年度は、in vivo ESRシステムを用いて、マウスの腫瘍を用いて、異なる照射線量を照射して、各線量ごとの再酸素化の程度、持続時間を測定する予定である。
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