本研究の目的は悪性腫瘍の治療を行った後に、各画像の特性を融合させて正確な治療効果を判定するプログラムソフトを開発することにある。治療の間に腫瘍は分子生物学的、機能生理学的、形態学的に変化していく。腫瘍細胞の分子生物学的変化を光画像と、核医学画像と、CTやMRI画像を重ねて同時解析する。これらの3つの画像を同時登録されるというプログラムソフトを開発して、時間差画像診断を可能とすることを最終目標としている。 腫瘍細胞を播種したウェルプレートをひとつの人工模型として、この系を時間差の画像を得るファントムとして検討し、本年度は以下の研究成果を得た。1.プレートに播種した腫瘍細胞(P-gp=多剤耐性関連たんぱく質を過剰発現)に多剤耐性克服剤を暴露した後;(1)抗がん剤アッセイを行った;(2)P-gpの機能を見る蛍光物質(Rhodamine)の取り込みを検討した;(3)P-gpの機能を見る放射性物質(Tc-99m-MIBI)の取り込みを検討した;(4)P-gpをコードする遺伝子mdrに対するアンチセンスシークエンスオリゴヌクレオチドをTc-99mにて標識した物質の取り込みを検討した。(1)と(2)、(1)と(4)との間に相関が認められたが、(1)と(3)との間には乖離が認められた。2.プレートに播種した乳がん細胞(HER2を過剰発現)に抗がん剤(タキソールと抗HER2抗体)を暴露した後;(1)細胞のviabilityを検討した;(2)細胞の膜透過性を検討した;(3)細胞のアポトーシスを検討した抗がん剤がタキソールである場合は、(1)と(2)と(3)について全ての乳がん細胞により相関が認められたが、抗HER2抗体(=ハーセプチン)の場合は、(1)と(3)との間に乖離が認められた。細胞の状態により結果が大きく左右されることが判明したため、当初の計画を一部変更することを余儀なくされた。
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