19年度はナノキャリアであるリポソームのマウス移植腫瘍内分布局在のin vivo可視化を検討し、従来のSPECT画像に比して、極めて高い空間分解能を達成した。この検討で、小動物用SPECT/CT装置の性能を活かして高分解能画像を得るためには、高濃度、高比放射能のプローブが必要なことが明らかになった。20年度はこの成果をもとに、がんの悪性度に密接に相関する腫瘍内低酸素領域について、その踵瘍内局在のin vivo可視化を試みた。 プローブとして低酸素応答転写因子HIF-1中の酸素依存的分解ドメインODDに細胞膜透過性を付加した融合タンパク質PCOSを検討した。これを^<125>Iで高濃度に標識することを試みると同時に、低濃度^<125>I標識体を用いて、担がんマウスに静脈投与の組織分布・腫瘍集積を検討した。また摘出腫瘍凍結薄切片を作成して、オートラジオグラフィ(ARG)、HE染色、ピモニダゾール免疫染色、ヘキスト蛍光染色を実施した。腫瘍モデルにはSarcoma180(S180)およびFM3A下肢皮下移植マウスを用いた。高濃度^<125>I標識体を用いて、小動物用SPECT/CT装置を用いた摘出腫瘍のex vivo撮像、さらにin vivo撮像を実施した。 ^<125>I-PCOS投与24時間後の腫瘍集積はS180担がんマウスで約1%投与量/g、FM3Aで約4%投与量/gだった。いずれのがんも免疫染色で低酸素マーカーであるピモニダゾール陽性部分を認め、腫瘍内に低酸素領域の存在を確認した。ARGの結果、^<125>I-PCOSは腫瘍内部に不均一に分布していることが明らかとなった。その分布はピモニダゾール免疫染色陽性部分と重なる部分もあったが、明確な相関とはいえなかった。 ^<125>I-PCOSをFM3A担がんマウス30MBq/30μg/head投与し、in vivo SPECT撮像を行った結果、1時間の収集で腫瘍内部の不均等な分布を示す画像を得ることに成功した。放射活性の腫瘍集積は0.7MBq(腫瘍重量約1g)だった。摘出腫瘍のARGの結果はSPECT画像とほぼ一致した。^<125>I-PCOSの腫瘍内分布はHIF-1活性を表していると考えられ、in vivoでの腫瘍内分布局在の可視化は意義深い。今後HIF-1活性等との相関などさらに詳細な検討を加える予定である。
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