研究課題
癌には2倍体(diploid)と異倍体(aneuploid)がある.これについては染色体不安定性や分裂期の異常という説も、異倍体のDNA indexが1から2の間であることよりこれを細胞融合現象の結果であると考えると理解しやすい。癌における細胞融合は珍しいことではなくマクロファージと癌細胞の融合による転移能の獲得という報告もある。消化器癌は炎症を背景因子とするものが多いが、その発生メカニズムの1っとして骨髄幹細胞と炎症による損傷を受けた組織分化細胞が細胞融合を起こして癌化するという新しい仮説を立てた。一方近年、癌幹細胞の研究が進んでおり幹細胞マーカーの研究も進んでいる。Aneuploidの腫瘍に骨随幹細胞のマーカーが発現しているか否かを検討した。23症例の進行大腸癌切除標本のパラフィンブロックより、裸核を抽出しフォローサイトメトリーにて核DNA量を測定した。同時に同じ症例に対し新鮮凍結標本よりRNAを抽出し、ヒト全遺伝子型オリゴヌクレオチドチップ(ACEGENE)にて遺伝子発現を解析した。核DNA量はDiploidが13例、aneuploidが10例であった。AneuploidのDNA indexは平均1.57で2例は複数のaneuploid、いわゆるmultiplodを認めた。二群間に発現量の差のある遺伝子を検索したが、両群を鑑別する統計学的に有意な遺伝子は同定できなかった。幹細胞のマーカーの同定が進んでいる。CD133、CD44は大腸癌において幹細胞のマーカーになることが報告されており、aneuploidの癌ではこれらの分子の発現が高い可能性があると考え免疫染色を行った。しかし、どちらの分子においてもaneuploidの腫瘍に発現が高いという傾向は認められなかった。
すべて 2008
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