研究概要 |
C型肝炎に起因する肝不全あるいは肝癌合併に対し、肝臓移植が積極的に行われ本疾患の延命成績は改善しているが、肝移植後のHCV肝炎再発は必発で、他疾患で肝移植した場合に比べ長期予後は明らかに悪い。最近我々は、肝臓内の自然免疫応答を司るnatural killer(NK)細胞を肝臓移植時に大量に採取する技術を開発し、強い抗腫瘍活性および抗HCV活性を誘導することに成功した。本研究の目的は、末梢および肝由来の活性化NK細胞の抗HCV機構を解明し、HCV患者に対する肝移植後再発の予防法として、活性化NK細胞移入療法を臨床応用することである。 まず、活性化NK細胞のHCV複製抑制機構の解明に関する検討を行った。肝由来の活性化NK細胞とHCV感染肝細胞をトランスウェルシステムで非接触性に共培養を行った。結果、直接の細胞接触が無くとも、パラクライン液性因子を産生し、C型肝炎ウイルス複製の抑制を確認できた。抗HCV効果をもたらす液性因子は主にIFN-_Yであり、中和抗体存在下ではウイルス複製抑制効果は減弱した。 次に、臨床肝移植症例に対し、肝由来活性化NK細胞を移入して術後HCV肝炎の再発予防に関する検討を行った。2007年12月までにHCV陽性肝癌肝移植患者へのNK細胞療法を7例に行った。急性拒絶反応を含め有害事象は認めず、安全に施行し得た。肝移植術後血清HCV RNA量の推移は、術後4週間にわたって非施行群よりも有意に低下していた。 以上より、臨床でも肝由来活性化NK細胞療法の有用性が示された。さらに、in vitro, in vivoにおいて機序解析を進め、安全かつ効果的な臨床応用を進めていく予定である。
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