研究概要 |
ヒト骨髄30検体から間葉系幹細胞(hMSC)を分離し、培養、分化抑制因子LIF、bFGF添加で未分化状態で増殖を行った。またhMSC由来の不死化クローンhMSC-3、-4,-5,-6と、さらにhTERT(human telomerase reverse transcriptase)導入でテロメラーゼを強制発現した株hMSC-3h,-4h,-5h,-6h,を作成した。網羅的遺伝子発現解析では、未分化細胞ではゲノムの10%程度の遺伝子のみ発現し、分化とともに多くの遺伝子が発現した。一方、不死化細胞株、がん幹細胞株で有意に発現した遺伝子を200程度抽出し、定量PCRで有意な遺伝子12種を選別した。また、hMSCのテロメアは、約40kbと伸長し、テロメラーゼ活性はなく、テロメラーゼ非依存伸長機構(ALT)を有していた。また、hTERTを導入したhMSC-株はテロメア長、増殖能、形態学的変化も顕著な差はなく、通常のhMSCと同様に、脂肪細胞、骨芽細胞、筋肉細胞へ分化誘導しえた。また、分化誘導とともに、テロメア長が短縮することも確認した。しかし、NOD/SCIDマウスにhMSC細胞株、hTERT導入hMSC細胞株を接種すると、いずれも腫瘍を形成し、hTERT導入細胞株4株中2株で、浸潤、遠隔転移を認め明らかにがん化していた。以上からhMSCから得られた不死化細胞株、がん幹細胞株の可塑性が確認され、未分化な増殖状態に保つシグナルとして、Wntシグナルなど3経路が明らかになり、hTERTを導入によってさらに活性化する遺伝子から、不死化獲得機構、がん化の機構の解明が可能であり、その候補遺伝子を8種見出した。これらからhMSCの長期培養法による悪性転換の指標を検討中である。また、作製したがん幹細胞株は、Cancer stem cellのモデルとして今後の研究ツールとなった。
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