当初、無菌マウスに腸内細菌叢を導入した際の肛門を用いて研究を行う計画であったが、無菌マウスの購入が不可能となり、この計画は中止せざるを得なかった。 現在、直腸切断術の手術標本から肛門組織を採取し、免疫染色等で肛門免疫機構について研究中である。また、通常マウス肛門組織に細菌やLPS注入を行い、肛門免疫反応を検討する実験の準備中である。 また、クローン病に伴う難治性痔瘻に対する標準的術式であるシートン法の長期経過例を臨床的に調査した。当科においてseton法を行ったCrohn病患者のうち、術後5年以上経過した27例を対象として再手術率とストーマ造設率をretrospectiveに検討した。術後観察期間は8.7±2.1年であった。Seton法施行後の再手術率・ストーマ造設率は経時的に増加し、観察期間中の再手術率は63%(17例)、ストーマ造設率は37%(10例)であった。ストーマ造設の適応は、肛門管癌に対して直腸切断術を行った1例以外は、すべて痔瘻の悪化によるものであった。結語 : Crohn病に合併した難治性複雑痔瘻に対するseton法施行後の再手術率・ストーマ造設率は高く、免疫抑制剤や抗TNFα抗体などによる術後の緩解維持療法の改善が必要と思われる。これらの研究結果を学会および論文で発表した。
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