研究概要 |
1)肝細胞癌および胆管細胞癌の細胞株における表面抗原の検討:ヒト肝細胞癌株であるHuH7, HepG2, Hep3Bおよび胆管細胞癌株であるSSP-25, HuCCT1, TFK1,0Z, RBEを用いて検討した.これまで癌幹細胞に発現しているとされている表面抗原CD24, CD34, CD44, CD45, CD49f, CD90, CD117(c-kit), CD133, CXCR4を検討した.これらの表面抗原で分画される細胞群を比較したものの,明らかに増殖度が高い分画は存在しなかった.そこで胆管癌に注目し,もし胆管癌に癌幹細胞が存在するならば未分化な細胞である肝前駆細胞とにた性質を持っているのではないかと仮定し,肝前駆細胞のマーカーであるAFPに注目した.2)レポーターベクターの作製:ヒトAFPのエンハンサーおよびプロモーターをともに有するハイブリッドプロモーターを作製し,これをEGFPの上流に組み込んだベクターを作製した.このベクターを5つの胆管細胞癌株に遺伝し導入し,それぞれ安定導入株を得た.3)胆管癌におけるAFP産生細胞が癌幹細胞であることの検討:5つの胆管細胞癌株由来安定導入株の内,RBEのみがAFPを発現し,かつEGFPをも発現していたため,これ以後はこのRBEを用いて検討した.EGFP陽性細胞はAFPを発現しており,陰性細胞はAFPの発現を認めなかった.EGFP陽性細胞は陰性細胞群に比べて有意に増殖活性が高く,さらに足場非依存性の増殖活性も有していることが示された.また,シングルセルソートにおいて,一つのEGFP陽性細胞からはEGFP陽性細胞群および陰性細胞群が出現してくるのに対し,一つのEGFP陰性細胞からはEGFP陰性細胞群しか認められなかった.以上より胆管癌においてAFP産生細胞が癌幹細胞である可能性が示唆された.
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