近年の研究により、心臓内に心筋幹細胞が存在することが明らかとなってきた。しかしながら、心筋幹細胞に関する研究は十分とはいえない。心筋幹細胞の同定に使われているマーカーもSca-1、CD117(c-kit)、Isl-1など確立したものはない。また、心筋幹細胞の量も単位心臓あたり数百個から全心臓細胞の数パーセントまでと大きな隔たりがある。さらに、心筋幹細胞の由来に関しても胚の中に心臓が発生した時点から心臓に長期間生存しているか否かといった点も不明である。このように、心筋幹細胞の性質、量、由来などの詳細は明らかとはいえず、さらなる検証が必要である。 本年度は、主にFlow cytometryの解析により心筋幹細胞の量と性質の動態的な変化を追跡調査し、心筋幹細胞の量と由来(骨髄であるか否か)について検討した。C57BL/6マウス(♀)からドナー心を摘出し、GFP-Transgenic C57BL/6マウス(♂)の腹腔内に移植した。移植2、4、8、12週目にドナー心を摘出後、酵素法により単離採集した心筋細胞をFlow cytometryにて解析した。心臓内のc-kit、Sca-1、CD133陽性幹細胞総数は単位心臓あたりに約数千から1万個であった。しかし、それらの幹細胞中にはレシピエント由来のGFP陽性細胞が移植2週目で約50%含まれており、4週目以後は約80%にまで上昇することが分かった。 以上の結果から、心筋内にはごく少量の幹細胞が存在することが示された。さらに、これらの幹細胞の大半は骨髄由来であることが示唆された。
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