【目的】理想的なバイオマテリアル・グラフトとして、患者自身の細胞・組織からなり、患者とともに成長し得る自家移植用血管・弁を皮下の工場(バイオプラント)で生産させる組織工学技術の確立をめざし、実現可能性を探索した。 到達目標】(1)バイオチューブ・バルブを宿主体内で生産させるために自己組織化を促進するDDSの開発(2)バイオチューブ・バルブのin vitro、in vivo機能評価を行い、「バイオプラント組織工学による自家移植用血管・弁の皮下組織での生産技術の開発」に関する実現可能性を探った。 【方法および結果】(1)アクリル棒を鋳型とし、ラットの皮下でのバイオチューブを形成させるモデルを確立した。(2)種々の生理活性物質のうち、ニコチンが自己組織化に重要な微小血管新生を最も強く刺激することを見出した。(3)ニコチンコーティングを施したアクリル棒を用い、2週間で十分な強度を持つバイオチューブを自己組織化させることに成功した。(4)バイオチューブは、内径2ミリメートル、壁厚399±135マイクロメートルで、耐圧性は、2682±722mmHgであった。(5)ラット頚動脈をバイオチューブ血管で置換し、6週間後に血管造影を行なったところ、十分な血流を確認することができた。(6)摘出したバイオチューブ血管の内層には内皮細胞が均一に多い、血栓の付着は認められなかった。 【結論】探索した薬剤中、ニコチンが最も有効に、血管壁の壁厚増加と血管内皮細胞の配列制御に有効であった。バイオチューブ血管の開発は実現性があると判断された。
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