研究概要 |
ラット脊髄完全離断モデルを作成。採取したラット嗅粘膜を移植した群と、神経細胞が存在しない呼吸粘膜を移植した群においてラット後肢運動機能を観察評価した。対象は体重200g、8週齢の雌性SDラット。麻酔下に第7-8胸椎レベルにおいて椎弓切除を行い、硬膜を切開。脊髄を完全離断し2mmのgapを作成した。あらかじめ摘出しておいた嗅粘膜を移植した群と、呼吸粘膜を移植した群を作成した。ラット後肢機能評価にはBBB score (The21-point Basso, Beattie, Bresnahan Locomotor Rating Scale and Operation al Definitions of Categories and Attributes)を用いた。両群間において、移植後4週から呼吸粘膜移植群に比し嗅粘膜移植群のラットの下肢機能が統計学的有意差を持って改善した。上記のpilot studyから、ラット脊髄離断モデルにおいては、嗅粘膜移植により一定の下肢運動機能の回復が得られた。免疫組織学的検索においては、graft内に幹細胞マーカーであるNestin陽性細胞が多数認められ、neurofilamentにて神経細胞の増加が確認され、また神経軸索伸長作用が確認されている嗅神経鞘細胞の増加が移植早期で認められた。これは移植後2週から4週で強く染色され以降その染色性が低下した。ラット後肢運動機能の改善は移植4週後に有意に改善しており、嗅神経鞘細胞の関与が予測された。さらにBDAを用いたtracerによる検索によって錐体路である皮質脊髄路軸索が、大脳よりgraftを超えて脊髄末梢へつながっていることも確認された。BBB scoreにおける下肢運動機能の改善は、脊髄内locomotor centerの機能によるものではなく、皮質脊髄路が再建されたことによるものと思われる。遺伝子解析については、現在ラット脊髄圧挫モデルにての解析を進めている。
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