研究概要 |
今回の研究では、我々が確立した腫瘍組織浸潤モデルマウスを使用し、軟部腫瘍におけるヒストン修飾と腫瘍浸潤能獲得との関連性をEpithelial-Mesenchymal Transition (EMT;上皮間葉移行)の理論のもと、HDAC複合体関連因子によるE-Cadherinの発現調節の解析を目的とする。 今年度は、(1)In vitroにおいて滑膜肉腫細胞株SYO-1を用いてHDAC阻害剤添加群、未添加群でヒストン修飾とE-cadherin, SnailなどのEMTに関連した遺伝子の発現を比較した、(2)In vivo腫瘍組織浸潤モデルマウスにおける、HDAC阻害剤によるヒストン修飾とE-cadherin, SnailなどのEMTに関連した遺伝子の発現を調べる。 Ih vivoモデルには、SYO-1をヌードマウス皮下に移植し、腫瘍細胞浸潤モデルを作成した。治療群はHDAC阻害剤を投与し、対照として腫瘍移植のみの未治療群を作成した。経時的に腫瘍組織を採取し、Realtime-PCR、免疫染色を行い、治療・未治療群で発現比較を行った。 In vitroでは、免疫染色ではHDAC阻害剤添加群でアセチル化ヒストンH3陽性であった。未添加群と比較してE-cadherinのmRNA発現が増強されたが、Snailの発現は変化しなかった。 In vivoにおいて、免疫染色では治療群でアセチル化ヒストンH3陽性であった。未治療群では皮下軟部組織への腫瘍浸潤が見られたのに対し、治療群では腫瘍は皮下に限局していた。このことよりHDAC阻害剤による腫瘍浸潤の抑制が示された。 さらにWestern Blot法にてE-Cadherin及び、アセチル化ヒストンの発現量を比較の解析を予定している。今後ヒストンアセチル化と転写因子のプロモーター領域への結合の変化について解析を進めていく予定である。
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