研究概要 |
今回の研究では、我々が確立した腫瘍組織浸潤モデルマウスを使用し、軟部腫瘍におけるヒストン修飾と腫瘍浸潤能獲得との関連性をEpithelial-Mesenchymal Transition (EMT;上皮間葉移行)の理論のもと、HDAC複合体関連因子によるE-Cadherinの発現調節の解析を目的とする。 方法 ヒストン修飾とEMT関連遺伝子の発現:滑膜肉腫細胞株2種類を用いて、In vitroにおけるHDAC阻害剤によるヒストン修飾の変化について、HDAC阻害剤添加群、未添加群で添加後0,12、24時間にHistone H3,4とAcetyl-histone H3,4のタンパク発現をWestern blot法で検討を行った。 SYO-1細胞の初代培養細胞からの新たな細胞株の樹立:SYO-L細胞の初代培養細胞より限界希釈法によって細胞を分離し、継代培養を行った(SYO-le細胞)。この細胞に対して、形態、増殖速度、染色体分析、ヌードマウス移植能、RT-PCR法、免疫染色法を用いて解板を行い、SYO-1細胞と比較検討を行った。またSYO-1細胞とSYO-le細胞との相互作用を調べるため共培養を行った。 結果 ヒストン修飾とEMT関連遺伝子の発現: Acetyl-histone H3,4タンパク発現の亢進を継時的に認めた。 SYO-1細胞の初代培養細胞からの新たな細胞株の樹立:RT-PCR法でSYT-SSX2遺伝子の発現を認めた。ヌードマウスへの移植では、腫瘤形成を認めなかった。免疫染色法では、in vitroにおいて間葉系マーカーvimentinと上皮系マーカーcytokeratinの発現が見られた。共培養系において、それぞれのinsert上では、plate上に播種した細胞株に類似した形態を呈した。 考察 HDAC阻害剤により、Acetyl-histoneタンパクの発現亢進を認めた。今後ヒストンアセチル化と転写因子のプロモーター領域への結合の変化について解析を進めていく予定である。 今回分離されたSYO-le細胞はin vitroにおいて、上皮様形態を示し、上皮系マーカーの発現を認めた。これらの細胞株は、滑膜肉腫の上皮様分化への解明に有用であると考える.今後単独培養系と、共培養系のSYO-1細胞を解析することで、細胞間の相互作用を調べる予定である。
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