研究課題
目的:本学理工学研究科加藤敬一准教授らが開発したSpan80ベシクルを用いたDrug Delivery System(DDS)による、悪性骨・軟部腫瘍の新しい治療法の開発を目的とした。結果:(1)このSpan80ベシクルは従来薬物キャリアーとして使用されているリポソームと比較して、膜流動性、膜融合性が大きく、有効な薬物キャリアーとしての臨床応用が期待できる。このSpan80ベシクルの膜特性を、更に詳細にリポソームと比較して検討した。FRET法の原理を用いて、NBD-PEとRhodamine-PEを膜内に含有させたSpan80ベシクル、およびPOPCリポソームの、ヒト骨肉腫細胞株(OST細胞)とヒト正常細胞(fibroblast)に対する膜融合を、それぞれ37℃下で観察した。その結果Span80ベシクルはOST細胞に特異的に膜融合するが、リポソームでは、OST細胞、正常細胞共にこのような膜融合を起こさないことを発見した。このことは、DDS薬物キャリアーとして、Span80ベシクルのリポソームに対する優位性を示すものである。さらに、(2)癌細胞に対してホーミングレセプター機能を有する海藻由来新規レクチンEucheuma serra agglutinin(ESA)をSpan80ベシクル表面に固定化し、そのベシクル内部こは抗癌剤イホマイドを内包させた、イホマイド内包・ESA固定化ベシクル(IEV)投与による上記の腫瘍治療効果を検討した。OST担癌ヌードマウスに対して、IEVを0.2ml(イホマイド濃度3.0mg/ml、ESA濃度79μg/ml)、このマウスに3日連続で静注投与後、そのマウスの腫瘍体積変化を観察した。その結果、フリーのイホマイド投与よりもこのベシクル投与の方が高い抗癌活性を発現することを明らかにし、悪性骨・軟部腫瘍のDDS治療に対する、Span80ベシクルの有効性を指摘した。
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