研究概要 |
SQUID(超伝導量子干渉素子)を用いて,生体に侵襲を加えることなく腫瘍細胞の生命活動によって生じる活動磁場の測定を行った.用いたセンサーは分解能12fT/√<Hz>のgradiometerで,可動ステージとして超音波モーター駆動(周期1Hz)の水平シフト型テーブルを用いた.測定は,磁気シールドルーム内で行った. 培養骨肉腫細胞(悪性)をシャーレに充満した群と細胞のない群で活動磁場解析を行った結果,環境磁場ノイズやステージのノイズの影響で,リアルタイムの磁場波形上では有意な磁場変化が観測されなかった.これを正規化した同期加算処理を行うと,細胞ありの群で腫瘍細胞から生じたと判断される活動磁場の波形が確認された. 腫瘍細胞をマウスに移植した群と対象マウス,さらに移植後安楽死させた群間で活動磁場変化を測定した結果,今回もリアルタイムの磁場波形上は有意な磁場変化を確認できなかった.しかし,データを同期加算し,さらにブートストラップ検定行った結果,腫瘍移植マウスで活動磁場の上昇に有意な相関係数の上昇を認めた. 意義・・・腫瘍細胞の生命活動によって生じる活動磁場の変化が再度確認された.しかし,非常に微弱な磁場変化であるため,その検出には,環境やステージの磁場ノイズを除去する解析システムの構築や検定の手法などシステム工学系の手法を応用する必要がある. 重要性・・・腫瘍細胞を非侵襲的に評価する手法が新たに開発されることにより,腫瘍細胞の早期発見,早期治療に寄与する研究分野となりえる.
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