21年度は、前年度までの骨幹部にドリルホールを開けた骨・骨髄損傷モデルに加え新たに骨折モテルを作成し、まずは同部位での損傷初期におけるShhの発現をReal time RT-PCR法により検討した。その結果、骨・骨髄損傷モデルではShhの発現はcontrolと比べ有意な上昇が見られなかったが、骨折モデルにおいては損傷2日後にShhの有意な発現上昇が見られた。このことは膜性骨化と内軟骨性骨化が通常通りみられる骨折モデルと髄内骨化がメインである骨・骨髄損傷モデルとではShhの発現が異なると考えられた。この二つのモデルにおける骨修復過程において関連する因子の発現に違いがある可能性があるので、BMP2の発現も検討したところShhの発現と同様で骨・骨髄損傷モデルでは損傷2日後において有意な発現上昇が見られず、骨折モデルでは発現上昇がみられた。ついで、Tamoxifen inducibleのCre-ER(T)-LoxPシステムが骨折モデルでも正常に稼働する事を確認するため、Cre-LoxPによるリコンビネーションが起こった細胞にLacZが発現するように作られたROSA/LacZレポーターマウスを用いて、ROSA/Cre-ER(T)マウスと交配し、Tamoxifen投与後に骨折部位並びにその周辺にLacZが染まることを確認した。ただしこのシステムでは生後5週辺りで損傷を起こし、かつTamoxifenを生後3週目と損傷2日前に前投与した場合にのみ骨折部ならびに周囲骨髄や骨膜の双方にLacZ染色が強く見られた。 上記の結果をふまえ生後3週と損傷2日前にtamoxifenを投与し5週で損傷を起こす計画に変更してROSA:ShhcとWtマウスに骨折ならびに骨・骨髄損傷を起こし、Tamoxifen投与後の損傷部位修復過程の継時的変化と遺伝子発現の継時的変化を現在観察中である。
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