近年の細胞生物学や分子生物学などの研究の進歩により、BMP(bone morphogenetic protein:骨形成因子)は多彩な機能を持ち、骨軟骨形成のみならず、発生・分化からがんや肺高血圧症などの疾患に至まで様々な生命現象や病態において重要な働きを担っていることがわかってきた。そこで本研究では、生きているマウスの中でBMPシグナルの転写を経時的に可視化する新しいテクノロジー(生体イメージング又はインビボイメージング)を開発し、BMPシグナルの時空間的制御機構を解析し、BMPシグナル伝達の生理的・病的な意義をインビボで明らかにするために、研究を遂行した。具体的には、(1)まず、インビボで検出可能な高感度ルシフェラーゼ遺伝子カセットを作製し、(2)さらにその高感度ルシフェラーゼ遺伝子とBMPプロモーターを繋いでBMP応答性ルシフェラーゼ遺伝子を作製し、レンチウイルスを用いて乳がん細胞株への遺伝子導入をおこなった。(3)次に、BMP応答性ルシフェラーゼ遺伝子を導入した乳がん細胞をマウスに移植し、骨転移を起こす過程で、BMPシグナルが活性化されることをインビボで経時的にイメージングすることに成功した。(4)また、そのBMPシグナルが乳がん骨転移において重要な役割を担っていることを明らかにするために、乳がん細胞にドミナントネガティブBMPレセプターを導入し、インビボで骨転移が抑制されることを明らかにした。
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