鞭打ち損傷後に発生する激しい頭痛、めまい、記憶障害など難治性の症状は外傷性脳脊髄液減少症(脊髄髄液漏)によることが強く示唆されおり、硬膜外自家血注入法(EBP:epidural blood patch)を用いて漏出部位を閉鎖することによって改善されることが多い。しかし脊髄髄液漏の確定診断は今のところRI脳槽造影検査しかない。 本研究は、外傷性脳脊髄液減少症患者の脳脊髄液に特有のバイオマーカーを検索・決定し、ELISAなどによる簡便な診断法と治療効果の判定法を確立することを目的とする。 平成19年度は、外傷性脳脊髄液減少症のEBP治療前後で施行するRI脳槽造影検査時に採取した脳脊髄液(CSF)を2次元電気泳動にかけ、治療前後で特有な動き(増減)を示すタンパク質を観察した。その結果、治療の前後で変動するスポットがいくつか認められたが、特にpI7〜9の塩基性を示し分子量10000〜15000の間にある5〜6個のタンパク質があることが判明した。 今後はこれらのタンパク質をスポッティングし、質量分析計を用いて分子量およびアミノ酸配列を決定し、同定を行う。
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