研究課題/領域番号 |
19659399
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
板野 義太郎 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (30127542)
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研究分担者 |
石川 慎一 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 医員 (00444662)
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キーワード | 外傷性脳脊髄液減少症 / 硬膜外自家血注入 / バイオマーカー / 2次元電気泳動 / 髄液漏 / シスタチンC |
研究概要 |
交通事故などによる鞭打ち損傷後の激しい頭痛、めまい、記憶障害など難治性の神経症状の原因の1つは外傷性脳脊髄液減少症(脊髄髄液漏)によることが強く示唆されている。この症例の治療は硬膜外自家血注入(EBP: epidural blood patch)やフィブリン注入によって漏出部位を閉鎖することで改善されることが報告されている。脊髄髄液漏の確定診断は今のところRI脳槽造影検査しかなく、造影装置を有する施設に限られることや、度重なる検査によるX線被爆が懸念され、これに代わる検査の必要性が求められている。 本研究は、外傷性脳脊髄液減少症患者の脳脊髄液に特有のバイオマーカーを検索・決定し、RI脳槽造影検査とあわせて、より簡便な脳脊髄液検査によって早期確定診断と治療効果の判定を可能にする診断技術を確立することを目的とした。 平成20年度はEBP治療の前後で変動するいくつかのスポットのうち、特にcystatin Cに注目してELISAによる定量を行った。Cystatin Cはcystatin superfamilyに属し、塩基性の等電点を有する分子量約13kDaの分泌型cysteine protease inhibitorであり、神経変性疾患との関連が示唆されている。 ELISAの結果、cystatin Cは、治療前が1.57±0.611μg/mLであったが、治療後に症状の改善が見られた症例では1.73±0.71μg/mLまで上昇していることが判明した。この傾向は全例で認められたが有意ではなかった。しかし再発例では治療前に比べても著しい低値を示していることがわかった(0.73±0.11μg/mL)。脊髄髄液漏に伴う髄液タンパク濃度には変化がなかったことから、cystatinCの低下は髄液の漏出によるものではないと思われた。髄液cystatin C濃度と激しい頭痛との間にどのような関連があるかはさらに症例を増やして検討する必要がある。
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