研究概要 |
本研究は、マウス前立腺の形態発生過程において、その発生母地である泌尿生殖洞の上皮細胞が、解剖学的に異なる腺領域に分かれる分子機構を解明することを目的としている。 まず、マウス泌尿生殖洞の凍結切片を作製し、Laser Capture Microdissection (LCM)を用いて、ventral prostate(VP,腹葉)およびdorsolateral prostate(DLP,後側葉)の間質細胞を採取し、Agilent 2100 BioanalyzerによるRNAの品質検定を施行した。その結果、LCMによりRNAは採取できているものの、Gene Chip解析にアプライできるだけのRNA品質が保たれていないことが判明した。本研究では、本学の備品であるオリンパス社製のLM-200を使用した。しかし、LCMの装置としては、各メーカーより数機種が販売されており、レーザーの種類、組織回収法、解像力などに相違がある。今後、LM-200以外の機器を使用することにより、より高品質なRNAを回収できれば、Gene Chip解析が施行できる可能性が高いと考えられた。 次に、上皮細胞の増殖を制御する細胞増殖因子の局在を指標に、泌尿生殖洞間質細胞の性状解析を試みた。実験方法は、マウス泌尿生殖洞(E17)を実体顕微鏡下にて機械的に上皮と間質とに分け、RT-PCRおよびリアルタイムPCRにより細胞増殖因子mRNAの局在・発現量を比較検討した。その結果、FGF-7(KGF)とIGF-I mRNAは間質のみに発現していたものの、EGFとTGFα mRNAは上皮と間質の両方に存在していた。両細胞増殖因子は、正常前立腺では基底上皮細胞のみが産生しているものの、肥大症や癌では周囲の間質細胞でも発現していることが報告されている。よって、発生期の泌尿生殖洞間質細胞の性状を詳細に解析することが、将来、肥大症や癌の発生や進展を抑える新たな治療法の確立に寄与すると考えられた。
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