1)腎の位置・形態異常に関する研究 カエル初期胚の脊索伸長などにおける形態形成の調節因子であるWnt5aを子宮外発生法によりマウス胎児尿管の周囲に注入し、腎臓の位置・形態変化における効果を検証した。腎が骨盤位にある胎生11日に、一側の腎周囲結合組織に分子を注入し、腎が上昇する12日以降に胎児を得て、上昇度、尿管長、尿管芽の分枝、尿細管形成について解析した。またDNA合成期に核に取り込まれるbromo-deoxyuridineにより細胞標識して追跡し、尿管上皮細胞の移動を解析した。現在まで試みた実験条件では、操作側と対照側の間の差が、個体差以上に有意であることが確認できていない。注入時期を1日後ろにずらすことも検討している。一方、細胞標識・追跡実験では尿管上皮の移動の所見が得られた。今後の実験効率を上げるため、操作胚における腎臓の位置をより簡便に判定できる方法を検討している。 2)ネフロン数の変異に関する研究 まず今後の研究で継続的に使用することになるためネフロン数の計測法について、より簡便かつ正確なやり方を検討して、いくつかの候補となる方法を選び、最終的な方法を絞り込みつつある。平行して、腎上昇後位置が固定される13日以降に、糸球体・尿細管形成における作用が培養実験系で示唆されている分子であるFGF-7の注入を行った。まず、小さなマウス胚の腎臓に注入ができることをマーカーにより確認した。現在、培養実験の報告に基づいて投与量および投与時期などの条件を変えながら、順次注入実験を進めている。
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