研究概要 |
卵巣癌の発生過程ではある特定の遺伝子変化はいまだに発見されておらずエペジェネティクな変化が重要だと推測されている。癌幹細胞においてもそういった変化を持った細胞が幹細胞として維持されていることが予想されることから、今年度まず上皮性卵巣癌における各種遺伝子のプロモーター領域DNAメチル化および遺伝子発現との関連について検討した。正常卵巣表層上皮初代培養細胞(OSE)8株、卵巣癌細胞株12株、卵巣癌臨床検体凍結標本64例、正常卵巣凍結標本6例よりDNA,RNAを抽出した。DNAについてはbisulfite処理を行った後に、RIZ1遺伝子およびERβ遺伝子のプロモーター領域に存在するexonONおよびOKのプロモーター領域に対するメチル化をbisulfite sequence法により解析した。またERβのアイソフォームであるERβ1,β2,β4,β5およびRIZ1についてリアルタイムRT-PCR法により遺伝子発現を検討した。卵巣癌細胞株および卵巣癌組織ではON, ERβ1, ERβ2、 RIZ1のプロモーター領域に高度のDNAメチル化が認められ、これらの遺伝子発現の有意な低下が認められた。一方で、RIZ1とERβ5の発現はOSEに比較して卵巣癌で有意に発現レベルの増加が認められ、特に明細胞腺癌において顕著であった。RIZ1遺伝子やERβ遺伝子の発現は、脱メチル化剤である5-azaCにより回復することを確認した。以上より各種遺伝子発現がメチル化で発現抑制され発癌・進展に関わっている可能性が示唆された。遺伝子プロモータ領域のDNAメチル化は遺伝子発現、組織型と密接に関連し卵巣癌幹細胞が持つと推定される特徴の一つと思われた。本年度の結果を来年度以降の癌幹細胞の検索にフィードバックする予定である。
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