研究課題/領域番号 |
19659436
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平野 滋 京都大学, 医学研究科, 講師 (10303827)
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研究分担者 |
金丸 眞一 京都大学, 医学研究科, 助教 (30324643)
田村 芳寛 京都大学, 医学研究科, 助教 (40397550)
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キーワード | 再生 / 喉頭 / 増殖因子 / 声帯 / 除放 / ドラッグデリバリーシステム / 瘢痕 / 細胞外マトリックス |
研究概要 |
肝細胞増殖因子(HGF)の除放製剤による声帯萎縮の治療効果を検討するために動物実験を行ってきた。イヌの声帯を切除することにより瘢痕萎縮した声帯モデルを作製した。HGFはゲラチンハイドロゲルと結合させることで、生体内で2週間かけて除放されるように調整した。除放期間についてはアイソトープを用いて生体内のHGF濃度を計測して確認した。これを作成後1ヶ月目の瘢痕萎縮声帯に注入し、半年後にその効果を組織学的、機能的に解析した。組織学的に瘢痕萎縮声帯は粘膜固有層内に過剰なコラーゲンの蓄積があり、同時に弾性繊維やヒアルロン酸といった声帯粘膜の維持に必要な成分が減少あるいは消失していた。また粘膜の著明な拘縮を認め萎縮を呈した。これに対し、HGF除放剤投与群ではコラーゲンの過剰蓄積は解消され、弾性繊維やヒアルロン酸の回復が認められた。粘膜の萎縮も軽度であり、組織学的には良好な組織再生がえられた。一方、声帯粘膜の機能を計測するために、摘出喉頭の吹鳴実験をおこなった。瘢痕萎縮声帯では声帯粘膜の可動性は著しく障害され、大きな声門閉鎖不全が認められた。これに対し、HGF投与群では、粘膜の萎縮が軽減し、振動状態も著明に回復していた。今回のモデルは急性期の瘢痕萎縮声帯であるが、これに対するHGFの再生効果が十分に確認された。今後は、より治療・再生の困難な陳旧性の萎縮声帯に対するHGF除放製剤の治療効果を検討する予定である。
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