研究概要 |
悪性リンパ腫関連網膜症(Lymphoma-associated Retinopathy:LAR)の患者血清中には網膜タンパクに対する抗体が存在することから、癌関連網膜症(CAR)と同様に自己免疫性疾患のひとつと考えられている。本研究課題の目的は、1)LARの患者血清が認識する網膜特異抗原タンパクを単離・同定し、2)そのタンパクの生理機能の解析、および3)網膜特異抗原に対する自己抗体が網膜組織・視機能に与える障害の有無・程度について電気生理学および組織形態学的な解析を行い、LARの発症機構および病態を分子レベルで解明することにある。 本年度は以下の研究を実施した。 (1)患者血清が認識する網膜特異抗原の検索 マウスの各臓器(網膜、脳、肝臓、腎臓、脾臓)からタンパク質を抽出し、ウェスタンブロット法を行った。網膜タンパクに対して、1,000倍希釈した患者血清が描出した3本のバンドの分子量はそれぞれ、120、107、57kDaであった。107kDaのバンドは網膜でのみ見られた。また、患者血清を用いて免疫染色を行い、抗原タンパクの網膜での組織内分布を検討した。患者血清は主にガングリオン細胞層の核および内顆粒層と外顆粒層の一部の核を認識した。 (2)マウス網膜から核タンパク質の抽出法の検討 患者血清が認識する抗原タンパク質が核に局在することから、マウス網膜から核タンパク質の抽出を行った。QIAGEN社のQproteome Cell Compartment kitを用いて、マウス網膜のタンパク質を大まかに細胞基質、膜、核、細胞骨格の四つに分画した。これらのタンパク質をウェスタンブロット分析したところ、120および107kDaの抗原タンパクは核画分に存在することが明らかとなった。
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