悪性リンパ腫関連網膜症(Lymphoma-associated Retinopathy: LAR)の患者血清中には網膜タンパクに対する抗体が存在することから、癌関連網膜症(CAR)と同様に自己免疫性疾患のひとつと考えられている。本研究課題の目的は、1)LARの患者血清が認識する網膜特異抗原タンパクを単離・同定し、2)そのタンパクの生理機能の解析、および3)網膜特異抗原に対する自己抗体が網膜組織・視機能に与える障害の有無・程度について電気生理学および組織形態学的な解析を行い、LARの発症機構および病態を分子レベルで解明することにある。 本年度は以下の研究を実施した。 (1) マウス網膜から核タンパク質の抽出法の検討 亜鉛固定したマウス網膜のパラフィン切片を用いて免疫染色をしたところ、患者血清が認識する抗原タンパク質が神経節細胞層および内顆粒層と外顆粒層の一部の細胞核に局在することから、マウス網膜から核タンパク質の抽出を行った。QIAGEN社のQproteome Cell Compartment kitを用いて、マウス網膜のタンパク質を大まかに細胞基質、膜、核、細胞骨格の四つに分画した。これらのタンパク質をウェスタンブロット分析したところ、120および107kDaの抗原タンパクは核画分に、54kDaの抗原タンパクは細胞膜画分に存在することが明らかとなった。 (2) アフィニティ抗体カラムの作製 抗原タンパクの同定を行うために、固定化抗体カラムの作製を行った。プロテインA-セファロースに患者血清を加え、血清中のIgGをプロテインAに結合させた。良く洗浄した後、架橋剤としてDMPを用いてIGgを固定化した。この固定化カラムと上記の実験で調整した網膜核画分のタンパクを用いて抗原蛋白質の分離およびLC-MSによるプロテオミクス解析を行っている。
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