研究概要 |
これまでに我々は、培養Muller細胞にグルタミン酸を負荷した場合の遺伝子発現の変化をマイクロアレイで網羅的に探索し、その結果として複数の遺伝子発現が上昇することを見出した。このうちインターロイキン-1β(IL-1β)およびtumor necrosis factorα(TNFα)の蛋白発現量は虚血網膜のMuller細胞において有意に上昇していた。さらにその後の細胞レベルでの検討からIL-1βおよびTNFαの両者が、GLASTおよびGLT-1によるMuller細胞へのグルタミン酸取りこみ量を増大させることを突き止めた。 本年度はIL-1βおよびTNFαからグルタミン酸トランスポーターへの作用機序の検討を行った。その後GLASTおよびGLT-1欠損マウスから作製した培養Muller細胞を用いて、両者の標的となる分子と各々の貢献度を検討した。また、培養Muller細胞へIL-1βを投与するとCaspase-11,TNFαなどのmRNAが増加することを確認した。Caspase-11はCaspase-1を切断することによってIL-1βの分泌を促すことが知られていることから、IL-1βが自らの作用を増強するためのautocrille loopの存在が考えられる。またIL-1βによるTNFαの増加は、やはり更なるグルタミン酸トランスポーターの活性化に結びつく可能性があることから、IL-1β投与がMuller細胞におけるIL-1βおよびTNFαの産生・分泌に与える影響をウェスタンブロットおよび細胞外液を用いたEHSA法を用いて定量化し、GLAST活性化に至るメカニズムの詳細を細胞レベルでさらに検討した。以上の結果を学術論文の原著としてまとめ、国際的に評価の高い分子生物学研究雑誌であるMolecular and Cellular Biologyに掲載された。
|