筑波大学小児外科で樹立したヌードマウス移植ヒト神経芽腫およびヒト横紋筋肉腫全てに対し、イリノテカン(CPT-11)単剤の低用量・連日投与は高用量・間欠投与と比較して、同等かそれ以上の抗腫瘍効果を示した。CPT-11の低用量・連日投与による腫瘍の増殖阻害は、本来の作用であるDNAトポイソメラーゼI阻害とは異なり、VEGFの発現抑制と密接に関連していた。しかし、CPT-11単剤では腫瘍の完全消失には至らなかった。そこで、さらに、3系統のヌードマウス移植ヒト神経芽腫を用いて、1:CPT-11とセレニウム化合物Se-(methyl)selenocysteine(MSC)との併用、および2:CPT-11とCOX-2阻害剤Celecoxibとの併用による抗腫瘍作用増強を調べた。また、3:高用量・間欠投与でCPT-11と同様の高い抗腫瘍作用を有するcyclophosphamide(CPA)を、低用量・連日投与でヌードマウス移植ヒト横紋筋肉腫に作用させたときの抗腫瘍効果の変化を調べた。その結果、1.MSCは単剤で抗腫瘍作用を示さなかったが、1系統の神経芽腫移植ヌードマウス腫瘍では低用量CPT-11との併用で抗腫瘍作用が有意に増強された。併用でアポトーシスに関与する遺伝子の発現が亢進した。細胞周期の停止やDNA修復に関わる遺伝子の発現誘導は認められなかった。2.Celecoxibは単剤では抗腫瘍作用を示さなかったが、3系統の神経芽腫移植ヌードマウス腫瘍全てで、低用量CPT-11との併用による極めて高い(p<0.001)抗腫瘍作用の増強が認められた。3.ヌードマウス移植ヒト横紋筋肉腫に対するCPAの抗腫瘍効果はCPT-11とは逆に、臨床で用いられると同様の高用量・間欠投与が最も高く、低用量・連日投与ではほとんど腫瘍増殖を抑制しなかった。単独では抗腫瘍作用を示さない低濃度CelecoxibをCPT-11と連日併用投与すると、多剤耐性の1系統を含む神経芽腫移植ヌードマウス腫瘍全てでCPT-11単剤と比較して極めて高い抗腫瘍作用増強が得られた。最近、CelecoxibのCOX-2阻害以外の作用が注目されている。今後は、低用量CPT-11との併用投与による腫瘍増殖抑制のメカニズムの解明および、両剤の最も有効な併用投与法の開発の研究を進める。
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