研究概要 |
まず左心シーリングディバイスの開発を行った。初期にはアンブレラ型シーリングバルーンと固定用可動性ハブを持つ圧迫式シーリングディバイスを試作したが,バルーン成形が極めて困難であるとともにハブとパルーンで挟む事による固定では不安定である事と縫合が煩雑になる事が判明した。そこで改良型としてバルーンおよび軟性隔壁膜による左房内フローティングによるシーリングディバイスを作成した。この改良型は良好にブタ死体心モデルで機能したので生体内実験へと移行した。 人工心肺を用いない心房中隔欠損閉鎖術施行のためにブタを用いた右心バイパス実験を生体での第一段階として行った。全身麻酔下,胸骨正中切開にて上下大静脈カニュレーションを行い,静脈還流血を人工心肺または遠心ポンプなどを一切用いず,直接肺動脈に還流させた。この一時的フォンタン手術回路とも呼べる血行動態によって,右房右室は完全に静脈還流血をバイパスさせて状態においても,左心系はそのポンプ能を代償可能な範囲で維持でき,現段階で30分以上の体循環の維持が可能となっている。今後,右心バイパス下での循環動態を肺動脈圧,上下大静脈圧,動脈圧,血液ガス分析,尿量などを用いて詳細に検討し,臨床での手術に応用可能な循環動態の維持の可否を詳細に評価する。さらに右心バイパスによる循環動態の維持が可能であったので,第二段階として,この状態のもとで右房切開を行い,冠静脈洞に逆行性冠環流カニューレを挿入,右心バイパスへ接続して右房および心房中隔の無血術野を達成した。この状態で開存している卵円孔に左心シーリングディバイスを挿入した。これにより卵円孔の縫合閉鎖に成功した。オフポンプ,心拍動下での成功は極めて大きな進展であり今後デバイスおよびバイパスの改良開発を継続して安定した手技を確立の上,成果を発表するよていである。
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