近年、生体のストレス防御系について、Nrf2-Keap1システムが発見され注目を浴びている。 本研究は、創傷治癒過程におけるストレス応答について、Nrf2とその制御下にある新規遺伝子EBBPに着目し、正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)における詳細な発現調節メカニズム、分子機能を解析し、創傷治癒における役割を明らかにすることを目的とした。 まず、EBBPのタンパク質レベルでの解析をするために、抗体を作成した。抗原にはEBBPタンパク質のN末端とC末端アミノ酸配列を人工的に合成したペプチドを用い、ウサギに免疫して抗血清を得た。これを用いてウエスタンブロットにより解析したところ、予想される分子量にシングルバンドのシグナルを得ることができた。さらにこの抗体は免疫染色、免疫沈降などにも使用可能であることを確認した。 次にEBBP遺伝子の発現調節の仕組みについて培養細胞を用いて解析した。DEMなどの親電子性物質の処理によりEBBPのmRNAが顕著に誘導され、酸化ストレス誘導遺伝子であることが明らかになった。さらに、siRNAを用いてNrf2をノックダウンしたところDEMによる誘導が抑制されたとともに、基底状態での発現が著しく減少した。よってEBBPの発現は基底状態、ストレス下ともにNrf2により制御されていることが明らかになった。 さらに、生体内におけるEBBPの機能を明らかにするために、KOマウスの作成に取りかかり、エクソン1を欠損したマウスの作成に成功し解析を進めている。
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