研究概要 |
本年度は真空凍結乾燥処理を施した培養細胞がどれほどの機能を維持するのかを、細胞内より放出されるサイトカインを定量することで検討した。 手術時に余剰となった健常人の皮膚より患者の同意を上で表皮細胞および真皮維芽細胞を培養した。それを市販の創傷被覆材(AQUACEL【○!R】,ConvaTec社製)上に散布して同種細胞含有創傷被覆材を作製した。 それぞれの群で新鮮な状態の被覆材と真空凍結乾燥を行った被覆材に分けて各6検体ずつサイトカインの測定を行った。なお真空凍結乾燥群は培養液をリンスした後に培養ディッシュごと液体窒素に浸漬して瞬間凍結せしめ、それを-50℃で真空凍結乾燥処理に供した。乾燥した被覆材にFBSを含有しないDMEM基礎培地を添加して12時間インキュベートしたものを検体とした。VEGF,bFGF,TGF-βの3種のサイトカインを定量した。 結果 1)線維芽細胞単独群 bFGFは新鮮検体からは放出されかったが、真空凍結乾燥検体からは平均2698pg/mL放出された。またVEGFは新鮮検体からは平均264pg/mL放出されたのに比較して真空凍結乾燥検体からは平均1062pg/mL放出され有意に多かった。TGF-βはいずれの検体からも放出が確認できなかった。 2)線維芽細胞+表皮細胞群 bFGFは新鮮検体から平均2698pg/mL、真空凍結乾燥検体からは平均40pg/mL放出され、新鮮検体から有意に多く放出された。VEGFは新鮮検体からは平均3303pg/mL、真空凍結乾燥検体から2538pg/mLの放出であり、各群に有意差は認めなかった。TGF-βはいずれの検体からも放出が確認できなかった。 今回の結果で培養細胞は真空凍結乾燥処理を施しても十分にサイトカインを放出することが判明した。表皮細胞を混合するよりも線維芽細胞単独の方がbFGFの放出は多かった。VEGFは表皮細胞を混合した方が多く放出された。
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