我々は以前の研究から、ヘルトビッヒ上皮鞘が外エナメル上皮に由来しており、歯根象牙質形成を誘導する可能性があることを示唆してきた。そこで、生後5日のマウス第一臼歯歯胚の上皮組織部分から、ヘルトビッヒ上皮鞘を切り出して無血清で培養することに成功した。また、この培養方法によって自発的に不死化した細胞株を作製した。この不死化細胞は、外エナメル上皮に発現するNotch2、ヘルトビッヒ上皮鞘に発現するEgfレセプター、IGFとIGFレセプターを発現する細胞であることを免疫組織学的に示した。この細胞とマウス歯乳頭細胞を混在してコラーゲンスポンジに移植して象牙質形成を誘導するかどうかを現在検証中である。 また、学会での発表から外エナメル上皮細胞のある種の遺伝子を抑制したノックアウトマウスでは歯胚の外エナメル上皮からも歯堤様上皮が発生し、新しい歯胚が作り出されることが示されたため、外エナメル上皮には我々が予期していた歯の発生に必要な潜在的な能力を有していることが改めて確信している。加えて、岩手医科大学歯科矯正科において矯主治療目的のために摘出される第三大臼歯歯胚から外エナメル上皮細胞の培養法の検討を行った。外エナメル上皮が未分化なエナメル上皮で、また体性幹細胞の可能性の観点から、低酸素状態とEGFとFGF2を用いることで無血清で培養することに成功した。
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