本研究では、唾液を用いてストレス度を測定することを目的として、ストレスで変化する唾液成分を網羅的タンパク質解析であるプロテオーム解析を実施し、有望なタンパクを探索し、診断に応用することにより現代のストレス社会におけるストレスマネージメントに貢献することを念頭においてきた研究である。最終年度では、ラットを用いたストレス度実験で明らかとなってきたストレス時増加する唾液クロモグラニンA・IgA・アミラーゼ、アルブミン等が人でも応用可能かどうか検討してきた。また、ラットで発見されたその他の候補タンパクについても検討を行った。方法は、騒音や計算による精神的ストレス、運動による肉体的ストレスに分けて検討した。その結果、クロモグラニンA・アミラーゼ・IgAはストレスと相関して増加する傾向が認められた。特にクロモグラニンAは精神的ストレスとよく相関した。さらに、クロモグラニンA・アミラーゼは特に唾液コルチゾールともよい相関が認められたが、その他発見されたタンパクではストレスとの関連は認められなかった。今回検索したストレスと相関したタンパクは全て既知のものであり、新規性には乏しかったが、この原因としてプロテオーム解析においてペプチドレベルの検出が行われなかったためと思われる。海外の文献的でも網羅的プロテオーム解析で検出されていないタンパクが、一方でウエスタンブロットにおいては検出されている例が多数ある。現在血清での解析は充分でないことからサンプルの調整法においての工夫が必要であり、今後ペプチドレベルの唾液プロテオーム解析の検討が必要と考えられた。
|