生体防御機構において免疫応答は極めて精密に制御されており、細菌、ウイルス、アレルゲンなど多くの外来抗原に対して非自己としての免疫反応が作動することによって生体防御が効率よく成立している。自己の抗原には決して反応しない筈の免疫細胞が免疫の破綻によって自己免疫疾患が発症すると考えられている。自己反応性T細胞は健常人においても生体内に存在するが、調節性T細胞によって自己免疫反応を回避していることが知られている。言い換えれは調節性T細胞の数的および質的不全によって自己免疫疾患が発症するか否かが規定されていると考えられている。しかし、調節性T細胞そのものを制御するメカニズムについては全く知られていない。自己免疫疾患モデル(シェーグレン症候群:NFS/sldマウス)を用い、末梢の調節性T細胞(Foxp3^+CD25+CD4^+T細胞)及び胸腺組織での経時的動態をフローサイトメーター及びサイトカインの産生パターンを解析すると、対照群と有意な差は見出せなかったことから、古典的調節性T細胞以外の分画による調節機構の存在の可能性が示された。さらに、aly/alyマウスにおいては古典的調節性T細胞の細胞数は対照に比較して有意に減少していたのに加えて、CD44ひghCD4+のメモリー型分画のCD25発現の亢進が目立ち、ナイーブT細胞からのIL-2を過剰に吸収することにより調節性T細胞様の働きを示していること判明した。一方で、炎症性腸疾患の新たなモデルとしてのLEのラットの解析においては胸腺における古典的調節性T細胞の産生含め末梢での調節性T細胞の細胞数の減少及び機能の低下が腸疾患の発症の深く関与していることを突き止めた(J Immunol印刷中2008)。
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