研究概要 |
本研究は原発巣の検査にて、原発巣における転移性癌細胞の有無と転移成立か否かを正確・低価格・簡便に検出するシステムの開発を目的とする。まず、RFPでラベルした非転移性癌細胞株とGFPでラベルした高転移性癌細胞株のヘテロな癌細胞集団を同所性移植し、各癌細胞の発育様式を検討した。非転移性癌細胞は腫瘍の中心部より消失し最終的に腫瘍辺縁部に残存するのに対し、高転移性癌細胞は腫瘍の中心部での独占的増殖と頸部リンパ節転移を示すという発育様式を示し、RFPおよびGFPを検出することにより非転移性癌細胞と高転移性癌細胞の分布がわかる再現性のある動物実験モデルを確立した。次に原発巣における転移性癌細胞を検出する分子を同定するため、高転移性癌細胞と非転移性癌細胞の遺伝子とタンパク質の発現の相違をDNAチップ(54675遺伝子)・二次元電気泳動法・質量分析法(iTRAQ法・LC-MS/MS解析)にて解析後われわれが開発したアルゴリズムによって両データを融合させ分子ネットワーク解析を行い、亢進しているシグナルネットワークを検出した。解析の結果、MIFがインシュリンレセプターシグナル・AKTシグナルやMAPキナーゼを介しHIF(Hypoxia-inducible Factor)シグナル系に、ErbB2,IQGAPがRac,PI3Kを介してHIFシグナル系に、Nago,C9がc-Ablを介してHIFシグナル系につながり、またG2,HO-2,DnaPK,PGK1,Cytokeratin 8,18,19,Cathepsin D(HIFシグナルの下流分子)など多くのHIF関連分子が同定され、HIFにつながるシグナルネットワークが転移に関連する最重要シグナルネットワークである可能性を見出した。現在ヘテロな癌細胞の同所性移植モデルにおけるこれらの分子の転移性癌細胞での発現と転移のstageとの関係を検討している。
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