研究課題
平成19年度に構築したカスタムメードのデバイスを利用することで、三次元ゲル内での細胞配置、配向制御に成功した。このシステムを用いて、骨芽細胞の長期培養を行った。その結果、三次元的に一軸に配列した細胞のパターニングだけでなく、一列に並んだ基質、さらには一列に並んだ石灰化基質の作製に成功した。この基質、石灰化基質のパターニングはゲルを構成する内部細繊維の構造に依存しており、さらに、ゲルの伸展割合を変えることで、石灰化基質の産生時期を制御できることがわかった。また、このコントロールともいえる、「伸展を加えていない骨芽細胞を含有したゲル」の長期浮遊培養の結果、ゲルは培養期間にともない形状変化を示し、また、石灰化が誘導され、結果的に球状の有機、無機複合体を形成した。この細胞含有ゲルの化学組成は培養期間に依存して変化し、また、沈着石灰化物はハイドロキシアパタイトであることが明らかとなった。さらに、この有機、無機複合体を生体内に埋入したところ、高い生体親和性と骨接合性を示した。上記のように、本研究では、ハイドロゲル材料の物理化学的特性、また特殊デバイスを利用した細胞機能制御を試み、三次元ゲル内での細胞配置、配向、機能の制御を達成した。また、細胞が産生する基質、無機基質を利用した、新しい生体擬似的材料の新規合成方法を示した。発生段階を含め、生体内はゲル様性質を多大に有していることから、本研究を通じて開発された技術やツールは、新しい細胞、組織操作方法として、今後の再生医療、あるいは組織発生研究に重要な役割をもつことが期待できる。
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