研究概要 |
TMD,いわゆる顎関節症はさまざまな徴候の複合的な症状,病態をさしている.その病態因子の一つである筋症状に関して,近年、fibromyalgia syndrome(FMS)、すなわち慢性筋痛、痛覚過敏,アロディニア(通常は痛覚に関与しないAβ低閾値機械受容器刺激により誘発される疼痛)および精神症状を呈する症候群とほぼ同様な範疇内の症状として論ずる試みが多くなっている.慢性痛に密接に関連すると言われる内分泌調節異常の研究において,持続的疼痛から慢性痛に至る病態形成の解明を目的とした慢性痛モデル動物を用いた研究報告はほとんど行われていない.Ulrich-Laiらの研究では、統計的有意差はないものの,坐骨神経CCIモデルラット群にコルチコステロンの低下傾向を認めている.今回の実験では、ACTH濃度には変化が認められずコルチコステロン濃度のみに低下が認められた.このことはコルチコステロンの分泌低下に対する視床下部、脳下垂体前葉へのフィードバック機構が,慢性疼痛様症状により阻害されている可能性を示唆する.この阻害が視床下部に起因するのか下垂体に起因すのか,あるいは両者の複合的障害に起因するのかは不明である.今回,血漿サンプルを採取する方法として,従来,われわれが用いていたdecapitationの方法では,同一ラットの経日的変化を追跡できないため,尾から採取する方法などを検討している.ELISAに用いるための有効な採取量を得ることが課題であるが,現在,さらに有効な方法について検討中である.
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