研究概要 |
1.含嗽液中の口腔粘膜剥離細胞からのRNA抽出法の確立 唾液中には,Rnaseが多量に含まれているため分解のないRNAを抽出することは困難である。対象症例は,口腔扁平上皮癌:68例,口腔白板症:18例,口腔扁平苔癬:10例,歯周病等の慢性炎症:11例,健常者:12例の119例で,そのうちRNA integrity numberが低品質で検査できない症例は慢性炎症の1例のみで,今回のRNAの抽出方法は適切であることが確認された。 2.疾患別のSCC RT-PCR陽性率 疾患別のSCC RT-PCR陽性率は,口腔扁平上皮癌:94.1%,口腔白板症:83.3%,口腔扁平苔癬:90.0%,炎症性疾患:10.0%,健常者:0%であり,癌,前癌状態,前癌病変の症例は健常者や炎症性疾患の症例と比べ有意に高率であった。口腔扁平苔癬,口腔白板症はともに癌化する可能性があり,検出できたことは極めて有益である。今後は,癌と前癌状態,前癌病変の区別ができるマーカーの検索も併せて行っていく予定である。 3.口腔扁平上皮癌のT進行度別のSCC RT-PCR陽性率 口控扁平上皮癌のT分類別陽性率は,T1:92.0%,T2:92.0%,T3:100%,T4:100%であり,T3以上の検出率は100%であった。しかし,T1,T2の初期癌においても92.0%と高率に口腔扁平上皮癌を検出できているため,本含嗽液を用いた検査法は有用であると考えられる。なお,口腔癌の原発部位が口蓋後方や口底後方である症例では癌細胞が剥離してこない可能性があることが確認された。 4.本スクリーニング法による効果指標 敏感度は口腔扁平上皮癌:94.1%,口腔白板症:83.3%,口腔扁平苔癬:90.0%と高かったが,特異度,有効度,陽性反応適中度は口腔白板症,口腔扁平苔癬では低く,口腔扁平上皮癌でも満足のいく水準には達していなかった。しかし,全体では敏感度:91.7%,特異度:95.5%,有効度:92.4%,陽性反応適中度:98.9%といずれの指標も90%以上と高く,この3疾患を検出するスクリーニング検査としては優れたものであることが証明された。
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