呼気中には、生体の代謝異常・疾患から来るさまざまな物質が含まれると考えられることから、口臭が全身疾患の指標として、早期診断、治療評価に適用できるかを検討することが本研究の目的である。そこで以下のような項目の検討を行った。 1.本学付属病院専門外来における口臭外来での患者700名を対象とし、基礎疾患調査および病歴の把握をした上で、被験者の口腔内ガス官能試験値および成分測定値(簡易ガスクロマトグラフィーによる各揮発性硫化物:VSCレベル測定)のデータベース作成を行った。なお、平成19年度の内訳は、男性102名、平均年齢42.3±16.0歳、女性163名、平均年齢45.7±13.6歳であった。 本データベースの平成19年度の集団において分析した結果では、官能検査とVSCガス成分量は相関し、メチルメルカプタン、硫化水素、ジメチルサルファイドの順で高い相関係数を示し、これら3成分の測定は口臭値として妥当であることが示された。また、口臭値は舌苔付着度とプロービングデプス値と相関し、対応として舌苔の除去と歯周治療が第一選択である根拠となった。全身状態との相関については引き続き分析中である。 2.口臭における被験者口腔内のVSC産生細菌の関与の検討 口腔内のVSC産生細菌は、メタボリックマーキングによる培養法で検出し、検出菌数と口臭レベルの相関性の検討を行った結果、VSCレベルを高度、中度、低度の3群に分けた場合、高い群ほど菌数との高い相関が認められた。 以上の結果より、口腔疾患以外の疾患を捉えるにはVSC以外の成分の検索が必要なことが裏付けられ、次年度には候補物質の分析を予定している。
|